古文の文章は現代の日本語の延長で何となく意味を理解できるものから、単語や文法をマスターしないとさっぱり歯が立たないというものまで実にさまざまです。
この記事を読んでいる皆さんの中にも、なかなか文章の意味がわからず古文に苦手意識を持っている学生もいるかもしれません。
そこで、古文の学習で欠かせない文法をマスターするには、どのように勉強したらよいのでしょうか?
この記事では、身につけるべき基礎知識から音読や歌を活用した勉強方法のコツまで、一挙にご紹介します。古文の文法と上手に付き合い、苦手意識をなくしていきましょう。
目次
古文ではなぜ文法を学ぶ必要があるのか?
古文の勉強では文法をしっかり学ぶことが大切です。それはなぜでしょうか?
まずは次の例文を読んでみてください。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」(紀貫之『土佐日記』)
単語としては「男」「日記」「女」など現代語と同じ意味の言葉が並んでいます。
しかし単語と単語をつないでいる文法を理解しなければ十分な現代語訳ができません。
たとえば「すなる」と「するなり」は何が違うのでしょうか。
「すなる」の「なる」は伝聞の助動詞「なり」の連体形です。一方で「するなり」の「なり」は断定の助動詞「なり」の終止形です。
ここで、伝聞の「なり」と断定の「なり」を見分ける方法は直前の動詞「す」の接続を確認することです。
「すなる」は「す」の終止形であるため続く「なる」は伝聞、「するなり」は「す」の連体形であるため続く「なり」は断定、と区別できます。
このように単語の意味が分かっていても、文法を理解していないと文章の意味が分からず、苦手意識が高まりやすくなってしまいます。
古文では文法をマスターすることが欠かせません。
文法の基礎を固めたら得られるメリットは?

古文の文法の基礎をしっかり身につけると、まずは助動詞の区別がつきやすくなるというメリットがあります。
先ほどの『土佐日記』の例で示した通り古文の文章の意味を左右する大きなカギが助動詞です。
しかし文法のルールを知らないと「すなる」「するなり」と一見そっくりな2つの言葉の区別がつかず意味も正確に理解できなくなってしまいます。
単語を覚えるだけでなく、その言葉が名詞・動詞・副詞・助動詞などどの品詞から構成されているかを識別することが重要です。
活用や接続のパターンを見抜くことで文章全体の意味を正しくとることができるようになります。
このように文法をマスターすると当然のことながら読解力がアップするというメリットもあります。
そしてすらすら古文を読めるようになると授業やテストへの苦手意識もなくなるでしょう。
古文文法の基礎を押さえておこう
古文の文法で押さえておくべき基礎知識として、ざっくり「品詞」「活用」が挙げられます。
主な品詞は名詞・動詞・助動詞・形容詞・形容動詞・副詞です。古文では文章を品詞分解した上で各品詞の意味を解釈していく作業が欠かせません。
単語を覚えるときは単に意味を覚えるだけでなく、それがどの品詞なのかも理解しておくようにしましょう。
そして、品詞と同じく大切なのが活用の理解です。
活用とは、たとえば『土佐日記』で動詞「す」が「すなる」「するなり」と下に続く品詞に応じて形を変えることを指します。
活用で間違いやすいポイントとして連体形と連用形の区別があります。
連体形は体言(活用しない言葉)、連用形は用言(活用する言葉)の前に置きます。
たとえば形容詞「うつくし」であれば連体形が「うつくしき人」連用形が「うつくしくなりぬ」です。「うつくし」にかかわらず形容詞の活用は「く・く・し・き・けれ・◯」のためあわせて覚えておきましょう。
また動詞の活用では出題されやすい下二段活用、四段活用、サ行変格活用、ラ行変格活用を重点的に理解しましょう。
下二段活用と四段活用を区別するポイントは使われる母音の種類です。
下二段活用では「え・え・う・うる・うれ・えよ」、四段活用では「あ・い・う・う・え・え」であるため、動詞の直後に「ず」をつけて未然形が「え」か「あ」かで区別するとよいでしょう。
また変則的な活用としてサ行変格活用とラ行変格活用があります。
サ行変格活用は「せ・し・す・する・すれ・せよ」で、下二段活用のうち連用形だけ変形させたものと覚えましょう。
ラ行変格活用は「ら・り・り・る・れ・れ」で四段活用のうち終止形だけ変形させたものと覚えるのがコツです。
文法を習得するための古文勉強法
文法を習得するためには3つのコツがあります。
まず動詞や助動詞の活用は音読しながら覚えてみましょう。
たとえば、サ行変格活用「す」であれば活用を音読しリズムを覚えます。
そうすると授業やテストのときに「せ・し・す・する・すれ・せよ」と心の中でスムーズに唱えられ文章中に出てきた「す」の活用が何なのかを思い出すことができるでしょう。
また活用や意味などを歌にのせて覚えることもおすすめです。好きな歌のメロディにのせて替え歌のような要領で覚えていくとよいでしょう。
さらに問題集や参考書を選ぶときには文法についてしっかり解説された教材を重視することもポイントです。何度も解説を読み納得できるようにしましょう。
古文の文法を覚えたら次に習得すべきことは?

単語を覚え品詞を識別できるようになり活用もマスターできたら次の関門は助動詞です。
先ほどの『土佐日記』の例にもありましたが、助動詞を理解できるかどうかで古文の理解度が大きく変わります。ただし助動詞は種類が多く動詞や副詞との区別も大変です。
たとえば助動詞「なり」には伝聞推定と断定という2つの意味があり、どちらを選ぶかで現代語訳が変わってきます。
また助動詞の「なり」だけでなくラ行四段動詞の「なる」との区別も必要です。
このように助動詞は多くの学生がつまずきやすいため、文法をある程度マスターしてから取り組むとよいでしょう。
まとめ
古文の文法は一見ややこしいですが、推理ゲームのように取り組むことで苦手意識がなくなり、すらすら読めるようになるでしょう。
たとえば「すなる」「するなり」という言葉が出てきたら、それぞれに使われている品詞を区別し活用と接続から品詞の意味をあて各品詞の意味を足していけば現代語訳が完成です。
最初は混乱するかもしれませんが、根気よく文法を勉強すれば、どんどん実力がついていくでしょう。音読や歌なども活かしながら自分にとってやりやすい勉強方法を見つけていきましょう。